《No.31》 ポニョとの約束

さて、「ポニョ」です。ご存知、宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」がここアメリカでも劇場公開が始まりました。全米で927館での公開、この週末の劇場窓口のチケットセールスは、9位ということでした。上映5週目に入る「ハリー・ポッター」が、「ポニョ」の約3倍の数の劇場で公開されていながら、510万ドルの売り上げです。それが「ポニョ」は360万ドルの売り上げを記録しているのです。ワシントン・ポスト紙も良いレビューを掲載していました。

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/08/13/AR2009081300895.html


私は4年前に仕事の関係で宮崎監督の知己を得て、そのご縁で、7月末にロサンゼルスで開催された監督がご挨拶される特別試写会に出席する機会がありました。


ハリウッドの劇場でレッドカーペットの日の看板

その後、ワシントンDCの大使館広報文化センターでは、スタジオジブリとディズニー社のご協力を得て、全米劇場公開前に「ポニョ」の試写会を開催することができました。8月12日のことです。すでに宮崎駿監督の名前は広くアメリカ人の間に知れ渡っており、いつものようにEメールでイベント告知をすると、たった2時間半で予定されていたチケット予約がうまってしまいました。
ワシントンDCは、大国アメリカの首都というイメージとは裏腹に、市内には失業率・犯罪率も高く主としてアフリカ系米国人が住む地域があります。そのなかでも、親がホームレスか失業中、あるいは平均所得以下の子どもたちのためにサマースクールをしているNPOがあります。そこで先生をしているジェニファーは、かつて大使館でインターンをしていた、日本文化ファンの女性です。そんな彼女の日ごろの努力に答えることができればと、今回の試写会に、彼女が担当する子どもたち(小学校低学年)20名を招待しました。こういったNPOの活動は、現在オバマ大統領夫妻が熱心に進めている“United We Serve”というイニシアティブ http://www.serve.gov/ にも合致するもので、私たちも何か貢献できればすばらしいことだと思っていました。

さて当日、やってきた子どもたちのまたかわいらしいこと! ほとんど全員が、生まれてこのかた、映画館に行ったことがないということでした。薄暗くなったホールに一歩足を踏み入れただけで歓声をあげ、そして映画が始まると、一つひとつのシーンでころがるような笑い声をあげて楽しんでいました。今日ジェニファーから「子どもたちが礼状を書いたので」、と大きな封筒が送られてきました。



金魚から突然、足がはえてきた女の子ポニョの姿を描いてくれたこの子の心には、鮮烈にあのきれいな映像と音楽が刻まれたことでしょう。7月のロスやサンディエゴでは、千人単位の観客のスタンディングオベイションで迎えられた宮崎監督ですが、ここワシントンの20人の小さなお客様たちの興奮ぶりも、同様に喜んでいただいているに違いありません。