《No.39》 ハイチの人々のために「ミラクルバナナ」!

ハイチでの震度7の震災から、早くも2カ月経ちました。新婚旅行で訪れたのが、まだ豊かだったハイチだったというビル・クリントン元大統領が、被災直後の現地に入り、精力的な活動を展開した様子や、その疲れがたたったのたのか、心筋梗塞で緊急手術を受けたたニュースが、日本でも報道されたと思います。


 この街ワシントンは各国大使館が軒を連ねていますので、こういう国際的な緊急援助活動が展開される自然災害・事件などがあると、きそって何かをしようという機運が盛り上がります。もちろん、大使館だけではなく、コミュニティごとや学校でも「何か自分たちができることをやろう」という動きが自然にわきあがってくるのが、アメリカ社会の良いところだと、いつも思います。


 われわれ大使館も何かできないかしら、と考えていたところ、JETプログラムで埼玉県で2年間すごした経験があるわがセンターのスーザンが、「そういえば、日本の外務省職員がハイチに行って、バナナの木から紙をつくるという映画を観た覚えがあるわ」と言うではありませんか。

 
 さっそく、インターネットで検索してもらったところ、たしかに「ミラクルバナナ」という映画が見つかりました。製作委員会をあたりましたが、やはり2005年制作なので、すでに解散しており連絡先がわかりません。こういうときに役に立つのが、身内のネットワーク。同僚が本省時代にカリブ海諸国を統括する仕事をしていたこともあり、各関係者からあっという間に連絡先を探しだしてくれました。


 これは、大使館の派遣員としてハイチに赴任した日本人女性が、現地の貧困ぶりを目の当たりにして、何か彼らのためにできないだろうかという思いから生まれたストーリーで、実話に基づいているものです。ノートも自由に買うことのできない子どもたちの姿をみて、紙そのものが貴重品であるハイチで、化学薬品などを使わずに、手作りの紙をつくることができないか。大量に打ち捨てられているバナナの茎から、繊維をとって日本の和紙職人の技術を使って、紙を漉いてみてはどうだろう。試行錯誤のうえ、子どもたちと作ったバナナペーパーに、「お母さん、ありがとう」という文字を書いていみる。そんな感動の物語です。
 



映画「ミラクルバナナ」より


 この主人公のモデルとなった大使館員が、実は今現在、日本赤十字の職員として、まさにハイチの首都ポルトープランスで復興支援に携わっているということもわかり、にわかに我々も上映会実施に向けて、動き出しました。


 時まさに、日本の支援物資の輸送機が、帰路、アメリカ市民をフロリダまで乗せて飛んだり、陸上自衛隊の派遣も実施されたころでした。そういった日本政府による支援の紹介や、この映画のモデルとなった赤十字職員からメッセージをもらって、プログラムを組み立てました。映画の配給会社からも、「ぜひ、ハイチの人々のためにお使いください」というメッセージとともにありがたいことに上映権無料で、DVDを提供していただきました。


米国パスポートを手に、日本の輸送機でマイアミに向かうアメリカ市民の少女


 さらに、この街のチャリティイベントではで当然のように行われることで、当大使館ではなかなかこれまで実現できなかった募金活動を組み合わせるために、当地の日本商工会にお願いし、上映会後に観客からの浄財を得て、ニューヨーク国連本部のユニセフに寄付をしようということになりました。
 

さて、上映会当日2月17日、その前の大雪がまだ道路上に小山のように残されている中、152席の会場は満杯になりました。映画の評判も上々で、エンディングでは拍手も沸き起こり、また募金も462ドルも集まりました。


 ハイチの人々のために…という想いから始めてみた企画が、助走期間たった10日間でこのように意外な形で実ったことは、我々にとってもまさに“ミラクル”な経験となったのは、言うまでもありません。