《No.42》 サムライ・ウィーク in DC!

 今からちょうど150年前、日本からの初めての外交団・万延元年遣米使節団がワシントンにやって来ました。ペリー提督率いる黒船が、下田に入港し日本に開国をせまった1854年から6年後のことです。


 初代駐日アメリカ総領事タウンゼント・ハリスとの間で結ばれた日米修好通商条約の批准書を交換するために、ハリスに促されて、徳川幕府が初めてアメリカに送った外交団は、ポーハタン号に乗り組んだ77名からなるサムライたちでした。

 
 日本から太平洋を渡る際の随行船・咸臨丸とその艦長・勝海舟や福沢諭吉とジョン万次郎の話はとても有名です。咸臨丸はサンフランシスコで泊まり、帰国しましたが、使節団77名はそこからさらに北米大陸の南を回って、パナマで陸路を通って大西洋側に出て、今度は出迎えの米国船で、ワシントン、ボルティモア、そしてニューヨークへと旅を続けました。このことは、日本でもあまり知られていません。当地では一部の専門家以外には、まるっきり知られていない史実です。


 ところが、当時の米国民からは大変な熱狂ぶりで各地で歓迎式典が開催され、多くの新聞がイラスト入りでこれを報じ、ニューヨークのパレードの様子を見た、詩人ウォルト・ホィットマンが長い詩を詠んだくらいなのです。


 さてこの使節団ですが、正使・新見正興、副使・村垣範正、そして目付・小栗忠順(司馬遼太郎に「明治の父」と評価された小栗上野介)が使節団の主なメンバーでした。ワシントンには3週間以上滞在をし、ジェームス・ブキャノン大統領に謁見し、批准書の交換がつつがなく行われました。


視察したワシントンの海軍工廠にて


 当時の様子は、ジャクリーン・ケネディ大統領夫人等が設立した「ホワイトハウス歴史協会」のサイトで、The Guest of the Nation: The Japanese Delegation to the Buchanan White Houseをご覧ください。執筆者のDallas Finnさんは明治建築の専門家で、90歳の高齢ながら、先日あるパーティにも来てくださり、「日本語が懐かしいわ」と元気なお姿を見せてくれました。

http://www.whitehousehistory.org/whha_publications/publications_documents/whitehousehistory_12.pdf


 この150年前の日米交流の基礎となる、まさに人と人との最初の交流がこの地で行われたことを記念して、私たちはSamurai Weekと銘打って一連の文化イベントを開催しました。


 まず、使節団が滞在したウィラード・ホテルでは、週末の午後に通常供される英国風アフタヌーンティーを、当時の日米二つの文化の出会い風に演出しました。日本人俳優にサムライの装束をまとってもらい、また当時のビクトリア朝衣装愛好家アメリカ人たちに来ていただき、マダム・タッソーから、当時のブキャナン大統領の蝋人形を借りてきて演出しました。

お茶を待つビクトリア朝の装いの人たち




3段重ねのケーキサーバーには和菓子と手まり寿司。日本茶をすすりながらのアフタヌーン・ティーを楽しむお客様を睥睨するブキャノン大統領(蝋人形)


 また、当時の資料を所蔵する米国議会図書館とも共催で、入江昭先生や、ロナルド・トビー先生など歴史家を招いて、幕末から明治にかけての日米交流に関する講演会を行いました。


 その後は、会場を大使館の広報文化センターに移し、ニューヨークから日本人俳優さんたちに来ていただき、殺陣を交えた剣劇公演を、そして翌日から3夜連続でサムライ映画を上映したのでした。ワシントン・ポスト紙でも、ウエブ週末版にBest Event in this Weekendとして取り上げられるなど、「サムライ」はすでに英語になっており、どのイベントも大人気でした。「浪人」という言葉まで、Masterless Samuraiという訳語とともに、認識されていることを考えると、現実社会においても、日本人男性は実はカッコいいのだ、というイメージをもっと演出しなければと思った月末でした。


当センターでのイベント詳細は、以下のサイトで。
http://www.us.emb-japan.go.jp/jicc/pdf/Evening%20with%20Samurai%20Flyer.pdf

http://www.us.emb-japan.go.jp/jicc/pdf/Yojimbo%20flyer.pdf

http://www.us.emb-japan.go.jp/jicc/pdf/Hidden%20Blade%20flyer.pdf

http://www.us.emb-japan.go.jp/jicc/pdf/Samurai%20X%20Flyer.pdf